中学受験では論理的思考や言語化能力など、基礎学力以外を問われるため、正しい対策が必要です。
社会や国語などの暗記科目や、暗記によって素早く問題を解き進められる算数では、暗記量が合否を分けるとも言われています。
今回は代表的な暗記方法と、算数と社会科で覚えておきたい項目をご紹介します。
自分や教科に合った暗記方法を見つけ、ぜひ合格にお役立てください。
暗記はまず背景や流れを理解することが大事
スムーズに暗記するコツとして、背景や流れを理解することが大切です。
特に社会科の歴史では、年号(数字)や人物名、出来事など暗記量が多く苦手な子も多いでしょう。
暗記が苦手な子どもは、場面や項目のみを覚えようとしますが、背景や流れが曖昧だと何が重要なのか分からず、すぐに忘れてしまいます。
最初に背景や流れを理解することで、「何が理由でこの出来事は起こり、誰が活躍したのか」と簡潔に理解でき、覚えやすくなります。
これから紹介する暗記法と併せて、背景や流れを理解することを意識してください。
暗記は3種類に分けられる
暗記は主に、暗唱系、練習系、分類系の3種類に分けられ、覚える内容によって向き不向きがあります。
暗記対象や覚え方のコツなどを簡単に表でご紹介します。
【暗唱系】
《覚え方》
暗唱できるまで繰り返し唱えて覚える
《暗記の対象》
- 日本国憲法の前文
- 重要な条文
- 古典の一文 など
《コツ》
①短文(7文節以下)に分解する
②重要な所を強調する
③強調部分を意識しながら覚えるまで読み上げる
【練習系】
《覚え方》
何度も書いたり計算を解いて覚える
《暗記の対象》
- 漢字や四字熟語
- 年号
- 円周率計算 など
《コツ》
①間違えた部分を記録する
②間違えた問題だけを繰り返し解く
③正解するまで繰り返す
【分類系】
《覚え方》
自分で分類し、その経験から覚える
《暗記の対象》
- 人名や地名
- 水溶液の種類
- 三大〇〇 など
《コツ》
①自分で考えた分類を作る
②暗記カードや一問一答形式で確認する
③覚えるまで続ける
苦手、苦痛だと思いながら暗記を作業にするのはNGです。
楽しくゲーム感覚で取り組んでみましょう。
代表的な暗記法5選
次に代表的な暗記方法として以下の5つをご紹介します。
- 書いて覚える
- 声に出して覚える
- 語呂合わせで覚える
- 暗記カードやチェックシートを使って覚える
- 人に教えて覚える
覚えたい内容や自分に合った暗記方法を見つけて上手に活用してください。
1.書いて覚える
1つ目の暗記方法は“書いて覚える”です。
文字を読んだり、目で見ただけで暗記するのは難しく、記憶には残りにくいです。
視覚だけに頼るのではなく、書くという動作を行うことで暗記しやすくなります。
ただし、書くことを作業にするのではなく、覚えようと意識することが大切です。
書きながら背景や流れを意識することでより効果的に暗記が可能になります。
2.声に出して覚える
2つ目の暗記方法は“声に出して覚える”です。
1つ目の“書いて覚える”と併せて行うとより効果的でしょう。
声に出すことで聴覚が刺激され、記憶に残りやすくなるといわれています。
塾や学校など周囲に人が居る場では、迷惑にならないよう注意してください。
3.語呂合わせで覚える
3つ目の暗記方法は“語呂合わせで覚える”です。
語呂合わせに関しては賛否が分かれる場合がありますが、暗記法としては効果が出やすいといわれています。
特に中学受験を控えている小学生には、ゲーム感覚で楽しく覚えられる方法として、親しみやすいはずです。
有名な語呂合わせを覚えるのはもちろん、自分で覚えやすい語呂合わせを作ることでより記憶に定着しやすくなります。
4.暗記カードやチェックシートを使って覚える
4つ目の暗記方法は“暗記カードやチェックシートを使って覚える”です。
暗記カードはよく英単語を覚える際に活用されていますが、漢字や年号、公式などを覚えるときにも活躍します。
持ち運びやすいサイズと、いつでもどこでも知識を確認できる手軽さがポイントです。
通学時間などの隙間時間を有効活用できるツールとして、ぜひ取り入れてください。
注意したいのが、カード作成に時間をかけすぎないことです。
子ども自身がカードを作る場合、作成に時間がかかってしまうと、単語を覚えることよりもカードを作ることが目的となり、暗記が進まないおそれがあります。
あくまで暗記カードは用語を覚えるためのツールです。
子どもの学力や間違えた問題を基に保護者が作成するのもよいでしょう。
最近ではチェックシートや暗記ペンなどを使う教材も増えています。
ペンやシートで隠れた重要な部分を覚えるのはもちろん、隠れている単語や文章を推測するために前後の情報を理解するトレーニングにも活用できます。
5.人に教えて覚える
5つ目の暗記方法は“人に教えて覚える”です。
暗記をする上で知識を記憶にインプットすることは大切ですが、覚えたことをアウトプットするのも重要です。
学び得た知識を人に正しく教えるためには、頭の中で情報を整理する力が必要になります。
人にうまく説明できなければ、理解がまだ曖昧ということで覚え直しましょう。
人に教えることは、記憶の定着と確認、情報の整理、言語化能力を鍛える手段として役立ちます。
中学受験の算数で覚えておきたい4項目
ここからは、中学受験で特に苦手科目となりやすい算数と社会科で覚えておきたい項目をご紹介します。
まず算数で覚えておきたいのが以下の4項目です。
- 四則計算
- 円周率計算
- 扇形
- 平方数
中学受験の算数は、他の科目より問題数が少なく、1問あたりの配点が大きい傾向があります。
計算問題以外の問いで、答えを導き出す過程を記述させ、論理的思考や言語化能力をチェックする場合もあります。
これらの問題に時間を多く使えるよう、計算問題は正確かつ素早く解けるようになりましょう。
そのために覚えておくと便利な4項目を解説していきます。
1.四則計算
四則計算は計算の基本ですが、特に小数と分数の計算が早くできるようになれば計算力はグッと上がります。
小数と分数は1/2=0.5、0.5=1/2と互いに変換できます。
しかし、分数から小数に変える方が難しいと感じる子が多く、混合した問題で手が止まってしまう子も少なくありません。
そこで、あらかじめ小数と分数を行き来できるよう暗記しておくことで、計算スピードを上げましょう。
小数に変換したときに割り切れる分数を暗記するのがおすすめです。
【4分のシリーズ】
1/4=0.25
3/4=0.75
【5分のシリーズ】
1/5=0.2
2/5=0.4
3/5=0.6
4/5=0.8
【8分のシリーズ】
1/8=0.125
3/8=0.375
5/8=0.625
7/8=0.875
2.円周率計算
円周率計算は試験にもよく出る問題なので、計算を正確かつ素早くできるよう九九の要領で9の段まで覚えておきましょう。
- 3.14×1=3.14
- 3.14×2=6.28
- 3.14×3=9.42
- 3.14×4=12.56
- 3.14×5=15.70 ※筆算する際に位がずれないよう“15.70”で覚えましょう
- 3.14×6=18.84
- 3.14×7=21.98
- 3.14×8=25.12
- 3.14×9=28.26
3.扇形
円周率を応用した問題として扇形の計算問題が出る場合もあります。
扇形の面積の公式は、“半径×半径×3.14(円周率)×中心角/360°”です。
“中心角/360°”は約分してから計算することが一般的のため、約分後の数字を暗記しておくと素早く計算ができます。
【分母12シリーズ】
30/360=1/12
150/360=5/12
210/360=7/12
330/360=11/12
【分母6シリーズ】
60/360=1/6
300/360=5/6
【分母3シリーズ】
120/360=1/3
240/360=2/3
【分母8シリーズ】
45/360=1/8
135/360=3/8
225/360=5/8
【分母5シリーズ】
72/360=1/5
144/360=2/5
216/360=3/5
288/360=4/5
4.平方数
平方数とは、同じ数字をかけ合わせた数のことです。
10×10までは覚えている子がほとんどですが、中学受験対策としては19の平方数までは覚えておくのがおすすめです。
- 11×11=121
- 12×12=144
- 13×13=169
- 14×14=196
- 15×15=225
- 16×16=256
- 17×17=289
- 18×18=324
- 19×19=361
中学受験の算数を攻略するポイントのひとつは、いかに素早く正確に計算ができるかです。
そのためには覚えておくと便利な数字は暗記しておきましょう。
中学受験の社会で覚えておきたい4項目
次に中学受験の社会科で覚えておきたい4項目をご紹介します。
- 都道府県と県庁所在地
- 都道府県別の農作物生産量トップ3
- 日本の歴史と年表
- 時事問題
中学受験の社会科は、知識量で合否が分かれると言っても過言ではありません。
試験直前は、短期間で学力アップが望める暗記問題を解く時間を増やし、1点でも多く点を取ることに意識をおきましょう。
1.都道府県と県庁所在地
都道府県名と県庁所在地は中学受験の社会科において必須単元であるため、必ず全て漢字で覚えましょう。
日本地図を使って都道府県の位置関係も同時に覚えるのがおすすめです。
各地方に何県が分類されるのか、気候や名産品などの特徴も併せて覚えることで、知識量は一気に増えます。
2.都道府県別の農作物生産量トップ3
農作物の生産量に関する問題は入試の頻出問題です。
円グラフなどを用いて「この農作物は何か」と問う問題や、都道府県名を問うこともあります。
また、農作物以外にも、乳牛や豚肉などの畜産、お米に関する都道府県別生産量を問う問題が出る場合もあるため、代表的な生産量は暗記しておくのがおすすめです。
3.日本の歴史と年表
中学受験の社会科では、年表を用いた歴史の問題がよく出題されます。
知識量を測るため、複数の時代をまたぐ年表で時代の流れや主要な出来事を問う問題が出題されるでしょう。
語呂合わせや暗記カードなどを用いて、年号と出来事を一緒に覚えるのがおすすめです。
試験によく出る代表的な歴史上の出来事と年号をご紹介します。
645年 大化の改新:中大兄皇子と中臣鎌足
710年 平城京遷都
794年 平安京遷都
1192年 鎌倉幕府が開かれる:源頼朝
(1185年説もある)
1573年 室町幕府滅亡:織田信長
1600年 関ヶ原の戦い:徳川家康(東軍リーダー)、石田三成(西軍リーダー)
1603年 江戸幕府が開かれる:徳川家康(初代将軍)
1867年 大政奉還(江戸幕府滅亡):徳川慶喜(第15代将軍)
1945年 第二次世界大戦 終戦
年号や出来事とあわせて、歴史上の人物の名前と肖像画を出題するパターンもあります。
特に肖像画の知識は問題集だけでは少ないので、教科書や資料集を読み込み覚えましょう。
4.時事問題
ここ1年間(昨年後半から今年前半まで)に起こった時事ニュースに関する問題も出題されます。
時事問題は教科書や問題集だけでは情報が少ないこともあるため、日本や世界で起こったニュースを調べるなどして把握しておきましょう。
塾やWEBで行われる模擬テストで出題された時事問題を受験対策として勉強するのもおすすめです。
中学受験の暗記におすすめ教材
今回は中学受験対策におすすめの教材を3つご紹介します。
昨今さまざまな教材が販売され、WEB上では無料で学べるものもたくさんあります。
数ある教材の中から選ぶポイントとしては、購入前に中身を確認し、子どもに合ったレベルのものを購入することです。
また、解説が分かりやすいことも重要です。
その教材を使って学ぶ子どもが、楽しいと感じられ、もっとやりたいと思える工夫が施されている教材を選んであげましょう。
社会:白地図トレーニング帳 中学入試
出版社:SAPIX
定価:税込み1100円(2023年11月時点)
小学4~6年生を対象とした教材で、地図帳と併用しながら進めるとよいでしょう。
基本的に白地図に書き込んで学んでいきますが、繰り返し学習できるよう、印刷したものに書き込むのがおすすめです。
書き込みにくそうであれば拡大コピーしてあげましょう。
暗記ペンなどで重要単語を覚えるのに使ったり、何度も書いて覚えるのに活用したり、さまざまな使い方があります。
社会:時事問題に強くなる本
出版社:学研出版
定価:税込み1650円(2023年11月時点)
中学入試だけでなく高校入試対策にもおすすめの教材です。
ニュースを、政治・経済・国際・社会文化・理科環境の5ジャンルに分類し、分かりやすい言葉や図で解説してくれます。
オールカラーで、本編と語句の解説や補足事項が分けて記載されているため読みやすい工夫が施されています。
国語:四字熟語クイズ-はんぷく-一般常識
開発元:Gakko Net Inc.(学校ネット株式会社)
料金:無料(2023年11月時点)
受験対策教材としてアプリを活用するのもおすすめです。
無料で使えるアプリも多く、このアプリではテーマ別に全137個の四字熟語を収録しています。
出題順が毎回変わるため実力チェックもでき、満点を取った回数や解答時間も表示されるため、モチベーション維持もしやすい仕様となっています。
四字熟語以外にも「ことわざクイズ」などがあり、隙間時間の活用におすすめです。
まとめ:自分に合った暗記法で毎日続けるのがポイント
受験において暗記は避けては通れませんが、苦手という子も少なくありません。
少しでも暗記に対する苦手意識をなくすために、自分に合った暗記法を見つけてください。
自分は何を覚えるのが苦手で、苦手な単元に有効な暗記方法をどれか。
どんなことなら楽しいと思え、どうすれば続けられるのか。
色々な方法を試して、組み合わせてみましょう。
暗記を始めとする勉強は毎日続けることで結果につながります。
1日5分でもコツコツと勉強を継続できるよう、周囲の大人たちの支えも重要です。
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