中学受験における女子中学校の御三家とは？特徴や違いを解説

中学受験を検討している学生やその保護者の方々は、「御三家」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

御三家とは、主に東京の最難関進学校として伝統と実績をもつ3校の総称で、男子と女子にそれぞれ御三家が存在します。

ここでは、女子中学校の御三家について解説していきます。

女子中学御三家とは

「女子中学御三家」とは、東京にある難関私立中高一貫校で特に名門とされる女子校のことを指します。

御三家は、創立が古く、伝統と進学実績が頭ひとつ抜けていたことから、この愛称で親しまれてきました。

それぞれの教育方針や校風は大きく異なるものの、毎年多くの東大合格者を出す進学校であることが大きな特徴です。

女子中学御三家の特徴

女子中学御三家に共通する特徴を挙げてみましょう。

まず、創立が古く、長い歴史と伝統を持っています。

そして、それぞれの偏差値は70前後で国内トップクラスに位置し、高い教育水準を保っ
ています。

また、御三家の全てが高校からの入学者は募集しておらず、中学入試に合格をしないと入学ができません。

通常、御三家として挙げられるのは、「桜蔭中学高等学校」「雙葉中学高等学校」「女子学院中学高等学校」の3校です。

この女子中学御三家の特徴を表す、ユニークなたとえ話があります。

「もし、道に空き缶が落ちていたら」、御三家の生徒はそれぞれどう反応するのかというたとえ話です。

人としての礼法にも力を入れており、勤勉な生徒が多いとされる桜蔭の学生は、「本を読むのに夢中で、缶が落ちていることに気づかない」。

掃除に重きを置き、上品で礼儀正しくする文化が根付いているとされる雙葉の学生は、「空き缶を拾って、ゴミ箱に捨てる」。

制服や細かい校則がなく、自由な校風が特徴の女子学院の学生は、「皆で缶蹴りを始める」。

このたとえ話は、それぞれの校風をうまく表していると言われています。

桜蔭学園 桜蔭中学校・高等学校

1924(大正13)年、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)の同窓会「桜蔭会」として創立しました。

そして1930(昭和5)年に、財団法人桜蔭高等女学校が設立されました。

毎年50人以上の東大合格者を出す進学校なので、勤勉で向上心のある学生が集りやすい学校です。

校訓は「勤勉・温雅・聡明であれ」「責任を重んじ、礼儀を厚くし、よき社会人であれ」、建学の精神は「礼と学び」です。

品性と学識を備えた人間形成や自立した女性の育成を目標とし、人として必要な礼法教育に力を入れています。

自ら考え、発信していく力の育成を重視し、授業ではオリジナル教材を活用し、既存の学習項目にとらわれない高度な内容を学びます。

大学受験を目標とした勉強ではなく、学問への興味・関心を養うことを目的とした教育を行っているのが特徴です。

生徒自身が学習を深めていく機会が多いため全体的に勤勉な生徒が多い、とされています。

雙葉中学校・高等学校

1872(明治5)年、「幼きイエス会」という修道会を設立母体とし、横浜に創立されたカトリック校です。

6年間を通して「宗教」の授業があり、カトリックの精神に基づいた全人教育を実践しています。

また、女子御三家の中で唯一併設の小学校があり、小学校から英語を正課としています。

そのため英語は、中学1年生では内部生と外部生は別で授業を行い、中学2年生から一緒に学ぶ仕組みです。

フランスの修道女によって設立された経緯から、現在でもフランス語教育を行っているのが大きな特徴です。

中学3年生になるとフランス語を履修し、高校生以降は英語かフランス語のどちらかを第一外国語として学びます。

女子学院中学校・高等学校

1870(明治3)年、築地居留地にA六番女学校として創立されたキリスト教主義の学校です。

その後、1890(明治23)年に桜井女学校と合併し、校名を「女子学院」と改めました。

1920(大正9)年より中高一貫教育校として現在に至り、東大合格者数も毎年20人以上に上ります。

毎朝の礼拝、さらに全学年に聖書の時間を設けるなど、キリスト教精神をベースとした教育が見受けられます。

高い理想を持つ自立した女性の育成を目指しており、制服や細かい校則はなく自由な校風が特徴です。

授業は全科目をバランスよく学習しながら、実験や作品制作などにも力を入れています。

また、プロテスタントのミッションスクールの中では珍しく、週5日制を導入しています。

御三家が人気のある理由

将来高いキャリア育成を目指している学生やその保護者にとって、女子中学御三家は非常に魅力的でしょう。

いずれの学校も質の高い教育を行っているため、努力次第で将来の可能性が大きく広がるはずです。

御三家に入学できたということは、さらに高い学力を身に付けられる可能性が十分にあるからです。

御三家は長年、高い教育水準を保ってきたことから、偏差値や進学実績における順位が入れ替わったとしても不動の人気を博しています。

新御三家の登場

近年、特筆すべき進学実績を出していることから、新御三家と呼ばれるようになった3校があります。

共通する特徴は、自立した女性の育成を目指していることや、難関大学への進学率の高さです。

また、御三家ほどの長い歴史があるわけではないものの、それぞれの校風には特徴があります。

それぞれ見ていきましょう。

豊島岡女子学園 中学高等学校

豊島岡女子学園は、受験日をずらすことで、優秀な学生の獲得に成功しました。

近年では、御三家に匹敵するほどの高い東大合格実績を出すこともあります。

豊島岡女子学園の前身は裁縫学校であったなごりが、現在でも続く、毎朝授業前5分間の運針の時間です。

国際教育にも力を入れており、グローバル教育と呼ばれる、海外経験、国際交流や異文化を知る機会を授業にとどまらず提供しています。

2018年にはスーパーサイエンススクールに指定されており、探求学習に注力している点も特徴の1つです。

鷗友学園女子中学高等学校

鷗友学園は、キリスト教の教えを基盤とし、「慈愛(あい)と誠実(まこと)と創造」を校訓としています。

ユニークなのは、学校生活に安心感を持たせるため、入学後「3日に1回の席替え」を実施していることです。

過去に偏差値が低迷しましたが、東京大学を筆頭に難関大学に合格者を輩出し、新御三家の一角に上り詰めました。

各教科で生徒が主体的・協働的に学べる授業(アクティブ・ラーニング)が成果を上げました。

大学受験によらず幅広い学びを通して視野を広げ、精神性と身体性のバランスがとれた人間を育てるため、特色のある授業が展開されています。

吉祥女子中学・高等学校

吉祥女子は、理系志望の難関大学への進学率が高い特徴がありますが、特に医学部への進学が顕著です。

ここ数年、その合格者数は毎年50人以上に上ります。

多様な価値観の尊重を校訓としており、比較的自由な校風のもと、建学の精神である「社会に貢献する自立した女性の育成」を目指しています。

郊外施設も充実しており、姉妹校訪問や留学など国際教育にも力を入れていることが特徴です。

なぜ新御三家が出てきたのか

古くから御三家という愛称で定着した3校があるのに、なぜ新御三家がうまれたのでしょうか。

そこにはいくつか理由があります。

ひとつは、優秀な学生の確保に成功した点です。

必然的に優秀な学生は、御三家に集まりますが、豊島岡女子学園 中学高等学校は、難関校の受験実施日をあえてはずしました。

そうすることで、御三家の滑り止めを受ける生徒を迎えることに成功しました。

また、難関大学の進学率の中でも理系や医学部への進学率が注目されています。

吉祥女子中学・高等学校は医学部への進学率が高いことで有名になりました。

そして、どの学校も入学後の国際教育へ力を入れています。

国際化が進む中、今後は海外の大学への進学や留学を希望する学生も増えるでしょう。

グローバル教育など先進的な教育を取り入れ、卒業後の視野を広げてくれる学校は、学生やその保護者にとって魅力的に違いありません。

御三家でも同様の取り組みはあるでしょうが、学生にとって選択肢が多いことは最適な進学先を見つける大きな助けになります。

これら複数の要因が組み合わさって、新御三家がうまれたと考えられます。

まとめ：適切な志望校を選ぶために気をつけたいこと

御三家も新御三家も進学校であることに変わりはありませんが、それぞれの校風は見事にバラバラです。

そのため、進学実績の良さだけで学校を選んでしまうと、入ってから学校の雰囲気に馴染めなくなることも考えられます。

対策として、学校説明会やオープンキャンパス、文化祭などへ親子で足を運び、その学校の雰囲気に合うかを見極めるとよいでしょう。

また、中高の6年間は10代の多感な時期と重なるため、そこで出会った先生や先輩、仲間の存在が将来に大きく影響を与えます。

空き缶のたとえ話がすべての学生や校風を表しているわけではありませんが、将来を見据えるうえで校風は重要であることが分かります。

また、男子校女子校に関係なく、人気の学校に共通して言えることは、学生の将来を見据えた教育に力を入れている点でしょう。

今後も、海外大学への進学を早くから支援するなど、先進的な教育に力を入れる学校が増えることが予想されます。

校風や卒業後の道に視野を広げ、家族の協力のもと自身の学力とも相談しながら、適切な進学先を決めていくことが大切です。

中学受験は大変なプロセスであり大きな挑戦ですが、その過程で心身の健康を守りながら、幸せな経験にしていけると良いでしょう。